8月13日、大英博物館とウエストミンスター寺院
 日本で調べた天気予報ではずっと雨模様のはずが、本日もいたって好天。ゆっくりモーニングをとってから、10時オープンの大英博物館へ行く。驚くほど安いファミリーチケット(市内中心部ならばオフタイムで家族合わせて6ポンド少しで地下鉄とバスが乗り放題)を買って地下鉄の駅を降りると人々はみな大英博物館へ向かっている。さずが元祖博物館なり。
 第一印象は、思っていたほどではなかった。なにしろいろんな人に話を聞いていたので、頭の中の大英博物館はまるで要塞のようなお城と化していたから。しかし、あの有名なリーディングルームは期待を裏切らないばかりか期待以上のものだった。まわりを本に囲まれて、まさに大英帝国の英知の中に漂っているような荘厳な雰囲気があった。古い机に置かれたデータ検索のコンピュータマシンも不思議とマッチしていて実にすばらい。Jも感嘆す。
 さて、展示だが、うわさどおりの広さと内容にどこからみていいものやら。なにげなく2階にあがり、妙にテンションの高いKに引きずられるようにして、とにかく端からみていくことに。最初はコインのコレクション。圧巻である。なかでも鋳造や鍛造の製造関連資料の展示もうれしい。しかしこれを端から見ていったらとても体がもたないだろうなあと思い、気持ちを振り切って次の部屋へ。雰囲気はなんとなくどこかしら奈良国立博物館の旧館や京都国立博物館の感じ。
 ところがどうやらまわる順番を間違えたようで、ギリシャローマを新しい時代から古い時代に回ったようで、でもこれが幸いして、完成された様々なオブジェの印象が最初に頭に入ったので、意外にも、時代による形の違いや特徴がよく見えておもしろい。さらにそこでメソポタミアの部屋に移ればやはり明確な特徴の違いがわかるので、地域による文化の明確な違いも気づく。簡単に言えば地中海側はアンフォラ、メソポタミアは中国的。
 ヨーロッパとアメリカをまわって、メモリーをリセットしながら、かの有名なロゼッタストーンを求めて1階へ。1階はもう言葉を失う。よくまあこれほどまでに。像と壁とパルテノン宮殿と地中海を専門にする人間は、きっとこの博物館で埋没したいだろう。きっと博物館が理想とするひとつの姿に違いないと思う。
 すっかり頭とからだが飽和状態になったところで本日の第2の目的地のロンドン博物館へ。ここではずっとローカルだけれど身近な展示を期待して。カフェで遅い昼食をとって少し休むが、さすがにここは日本人がいない。みかけはこじんまりしているが、内容は豊富だった。
 展示は旧石器から始まる。K曰く「原点はいっしょなのね」。その後、展示室が変わっていわゆる歴史時代以降のロンドン。西暦が書いてるので日本の時代と対照させながら歩いているとJとKから顰蹙をかう。日本の中世以降と比べて、とても生々しくて、日本で言うと民俗資料を見ている雰囲気。勉強が足りないかなあ。
 最も関心を持っていたのは、ロンドンの成立背景。ロンドンはどうしてロンドンなのか。予想していた説明のイメージは水の都。いかに。残念ながら詳細な説明は、ロンドンが都市として成立して以降の大ロンドンの発展の歴史。その中には江戸東京博物館を思い浮かべるような実大の体験型展示もある。
 それではあらめて、どうしてここにロンドンが生まれたのだろうか。それこそ大都市ロンドンを発掘しないとわからないところだけれど、すでに大ロンドンは発掘の可能な部分が限りなく少ないのでかなり困難な状況のよう。しかし、近年はロンドンの発掘も積極的に行われているようで、面白そうな図録も販売されていた。(なお、16日にチャリングクロスの本屋でこれはという本を見つけた。いずれ授業で紹介しよう)ちなみにロンドン博物館のある場所は、もともとのロンドンの中心地に近く、そういえば、ロンドン博物館から地下鉄にもどるとそこがセントポール寺院で、その周囲にも尖塔が多く見られる。
 ロンドン博物館の後、Jの企画でグリニッジ天文台のあるカティーサーク公園へ。イギリスに着いてまだ2日目だというのに、DLRという無人運行の列車に乗ってドックランズというニュータウンを抜けてゆく。カティ−サークのひとつ手前で降りればテムズ川の地下を歩いてくぐれるそうだが、さすがに時間が無いのでそれはキャンセル。カティーサークは、元の海軍大学が置かれていたところで、テムズ川はこの場所で大きくまがり、あたかもロンドンの東の端を象徴するがごとく。帰りに乗れたら船で戻ろうと、時間を確認したのち、天文台のある丘の上まで登る。観光客だらけの日付変更線付近をなんとなく歩き回って後、坂を下る。確認した船の時間にはまだ早いはずだが、念のため売り場に行くと、別の会社の船の出航5分前。大慌てで切符を買って売り場のおばさんに急きたてられて、気がつけばテムズ川の船の上。まだイギリスに着いて2日目なのにこんなにスケジュールをこなしていいのだろうかと。さすがおそるべしJ企画。
 テムズ川の川岸の風景で注意されるのは、やはり船着き場関係。とくにカティーサークの大蛇行周辺の左岸は運河も入り込んでいて、すっかり港の雰囲気。ロンドン塔の近くには、ロンドンで最も古いドックもある。
 考えてみれば、ロンドン塔もセントポール寺院も、国会議事堂もウエストミンスター寺院も、ロンドンのランドマークはみんなテムズ川の近くにある。なお、船上ではカップサービスのペプシを1ポンドで飲んだけれど、今から思えばこの頃から1ポンドが100円感覚になってくる。
 夕陽を受けてまぶしいほどにかがやくビッグベンにみとれながら、閉館ぎりぎりでウエストミンスター寺院に入る。11世紀にさかのぼるこの寺院は、この旅で最も強い衝撃を受けた場所になった。博物館の在り方も考えさせられた。貴重な体験と感想については、また後日。
 まだイギリスに着いて2日目なのにこんなにスケジュールをこなしていいのだろうかと。さすがおそるべしJ企画。