中世史を見直すにあたり、今最も注目されているのが集落遺跡研究です。これまで中世史研究の中心的な課題とされてきたのは、荘園制に代表される農民と武士の対立の歴史でした。しかしこれに対して、中世の日本列島で重要な役割を果たしていたのは農民だけではなく、様々な職種に携わった工人、大量で多岐にわたる品々を運び、それで利益を得ていた流通業者と商人、日本列島を取り囲む海で生活していた人々、芸能民そして宗教者たちでもあったことが、網野善彦氏に代表される研究者たちによって明らかにされつつあります。
 実際この研究は、政治と文化の中心であった京都や鎌倉などの都市遺跡では、比較的多く残されている文献史料との協業によって様々な視点からの検討が試みられ、中世史を見直す原動力のひとつとなっています。しかし、これら以外の日本列島の各地にあった、多くの町や村や都市的な場(集落遺跡)については、その研究こそが京都や鎌倉などの中心的な都市以上に必要であるにもかかわらず、中世遺跡研究の方法が遅れていたことと、文献史料が少ないことなどから、「一地方の農村」といった見方以外、あまりその実態について考える機会をもたれないできていました。
 しかし全国でみつかってきている中世の集落遺跡とは、本来農民も含めた商人や職人など様々な人々が生活していた場所なのであって、それらを一元的に農村として見てしまっていては、本来の豊かな中世史像を復原することはできないのです。
 現在最も重要なことは、こういった全国で見つかっている中世の集落遺跡を正しく評価し、中世史を見直すことなのです
調査の目的1