歴史学と情報−仮想空間クリエイターによる歴史遺産活用にむけて−

はじめに−情報の共有化とコラボレーション−
 インターネットの普及により、情報革命がおこり、現在も猛スピードで加速している
 その結果、これまでと大きく違ってきたことがふたつある

1、情報の共有化
これまでの情報は権力をにぎったものが、囲い込み、制御するものだった
しかし現在は情報を特定の人物に集約して、制御することは不可能
→情報は囲い込むのではなく、共有化して活用することに意義がある
→インターネットの普及による情報革命以降の、新しい時代の社会における自由と平等の権利と義務の概念

2、コラボレーションーアトムからドラえもんへ−

 かつての子供達はアトムをみて育ちアトムを目指した
 次の世代の子供達はドラえもんをみて育ち、「インターネット」という「どこでもドア」を得た
→わたしたちはインターネットを利用することで、仮想空間で、異文化と交感することにより、日々新しい発見をする
→異文化との交感、そしてその先にある新しい発見。新しい価値観の創造。
これがインターネット革命以降に私たちが体験しているそれ以前と違う二つ目の世界

3、歴史学と情報

歴史とはなにか
私たちがこれから生きていく生活をあやまらないために、私たちがこれまで生きてきた生活を検証すること

→私たちがこれまで生きてきた生活=実はこれが情報そのものである
情報が形になっているのが歴史資料

→基本はモノ資料からなるドキュメント
 その下位のディレクトリーにあるのが文字資料と狭義のモノ資料からなるドキュメント
(文字資料も本質的にはモノ資料である)

文字資料には、私たちの過去の行為の様子が直接的に記されている
モノ資料には、私たちがそのモノを使う際に意図した意識が形や大きさや色や素材の選択という形で間接的に記されている

歴史家はこれら2つの資料(実はふたつの資料の情報)を駆使することで、わたしたちのこれまでの生活の総体を検証してきた

しかしそれをおこなうに際してこれまで大きな問題がふたつがあった

最大の問題は、検証すべき情報のつまっているドキュメントがリアル資料であること
→これは、より多くの歴史家によって公平に検証されるべき機会に制限を与えている
よって歴史研究は情報を共有化することが非常に困難な学問だった

これは文字資料にもモノ資料にも言える

二つ目の問題は、狭義のモノ資料の場合、素材や大きさや形など全く違ったカテゴリーのものがあたりまえにあり、歴史家はそれを全部同時にみないといけない

考古学は、こういったさまざまな要素をいっさいがっさい、まとめて、ひとつにする考え方を整理する学問
→多変量解析な研究分野である

考古学とは元来異文化コラボレーションな研究だった
しかしなかなか難しかった

→何が難しいか
がんばって関係する資料を集めてそれらを机の上に並べた
一生懸命図面をつくってそれらを机の上にひろげてどれとどれは似ているとか似ていないとかを
各自の経験と知識の蓄積の中で比較して、関連性を考えて
一見バラバラに見えるがらくたの中から人間の営みの深淵にせまろうとしてきた
しかし当然机の広さには限界があるし、関係する資料を集めたくても、それが全部同じところにあるとは限らない

大量の情報を駆使(情報の共有化)した、多変量解析的な研究(異文化コラボレーション的な研究)が、考古学と歴史学のめざす理想の研究法なのだが、とても物理的に無理と思われていた

でも、救いは問題の所在が明確だったこと

そこにインターネットの普及と情報革命がやってきた

最初に行われたのが文字資料の情報の共有化

文字資料のデータベースと高精細な2次元のアーカイブが精力的におこなわれた
近年はその活用もさまざまに試みられている
 
・国文学研究資料館の岩波古典文学全集のデータベース
 http://www.nijl.ac.jp/

 東京大学総合研究博物館
 http://www.um.u-tokyo.ac.jp/museum/

・学研のズームアップ日本の歴史など
・東京国立博物館の展示資料公開
 http://www.tnm.jp/scripts/Index.idc

・京都国立博物館のデータベース
 http://www.kyohaku.go.jp/meihin/masj.htm

・国立歴史民俗博物館のデータベース
 http://www.rekihaku.ac.jp/gallery/index.html

・本学歴史資料館のデータベース
 http://hmuseum.doshisha.ac.jp/

 国際日本文化研究センターの試み
 http://www.nichibun.ac.jp/research/ken_menu/space.html
 http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/database.html

インターネットの普及による情報共有化は、かつてのような特定の個人に限定した資料情報の取得に対して、学問と研究にとって情報の平等の時代の幕を開いた

そして考古学は
VRによる総合学「景観復原」への道を歩み始めている
3DVRによるかぎりなくリアルな歴史叙述への挑戦

私たちの生活にとって最も必要なものは「場所」
→歴史研究にとって最も根底におかれるのは「場所」。場所が無いと歴史は成立しない
→具体的には歴史遺産・景観・遺跡

あらゆる情報をそれぞれの時代の景観にのせることが歴史研究の原点

これまで想像していたが、あまりに荒唐無稽で出来ないと思われていたことが出来ようとしている
→たとえばもうひとつの地球をつくるようなことも(ドラえもんのパラレルワールド)

地形復原→あらゆる歴史遺産→道や川も→遺跡も遺物も→位置情報のある記録も


3D遺跡情報の公開実験
 http://hmuseum.doshisha.ac.jp/html/research/shinmachi/

3D遺物情報の公開実験

GIS(地理情報システム・空間情報科学)を基盤とした歴史系総合研究の可能性

歴史家は元来、文献や考古資料から見えない過去を読みとってきた
歴史家は元々仮想空間クリエイターだったのである

そしてインターネットによる情報革命以降
歴史家はその本来の仮想空間クリエイターとしての仕事を、情報とVR技術とGISの理論を元に拡大させようとしている

キーワードは歴史遺産活用